彼女を好きなワケ 【逢いたい~桜に還る想い~・番外編】
──トーコさんが男の家に泊まるなんて、
しかも酔った状態で、無防備に寝ちゃってるなんて、心配過ぎて俺がヤダ──
そんなヤキモチ妬きな言葉を飲み込んで、
「……家主直々に回収依頼の電話掛かってきたし」
なんて、ごまかす。
……だいたい、ヤキモチなんか妬いて、どーすんだ、俺?
トーコさんは困るかもしれないじゃん。
顔も見たくないのかもしれないし。
そう───二人で海に行った日の夜、
“澪”……前世の記憶を思い出してしまったトーコさん。
一番恐れていた事態に、
俺は彼女の口から、憎しみの言葉を……拒絶の言葉を聞くのが怖くて、
解らない振りをした。
そして、───トーコさんはその数日後、期間限定とはいえ、下宿するために家を出ていってしまった。
……こんなことなら、始めから親に着いて行っときゃよかったんだ、海外に。
そしたら、こんなふうに傷つけることなんて、なかったのに。
───相変わらず後悔だらけな、馬鹿な俺。