彼女を好きなワケ 【逢いたい~桜に還る想い~・番外編】
★ ★
「さてと……行きますか」
通話を切った俺は、ペットボトルのお茶を一口飲むと、国道沿いを自転車で走り始めた。
生ぬるい夜風が頬を撫でる。
──“幸せを祈ることだけ”──
自転車の俺をビュンビュン追い越していく車のテールランプをぼんやり瞳に映しながら、
さっきの瑤子さんの言葉が浮かんだ。
………そう。
触れたくなる近さでただ見守るってのはやっぱり無理で。
でも、彼女の幸せを願いたいんだよ。
ならば────……
今の近いこの距離を遠ざければ、何かが変わるんじゃないか。
……この想いも少しずつ薄れていくかもしれない。