彼女を好きなワケ 【逢いたい~桜に還る想い~・番外編】
「……郁……ちゃ……」
不意に───トーコさんが、小さい頃の呼び名を寝言で呟いて。
懐かしさに、愛しさに、胸が痛くなる。
「………人の気も知らないで……酔っ払い……」
小さく憎まれ口を叩いて、よいしょ…ともう一度体勢を直すと。
俺は、恐らくこの先伝えることはないであろう言葉を、思わず口にしていた。
「トーコさん───好きだよ……」
離れれば………いつか、俺の中のこのどーしようもない想いも消えてなくなるのかな?
「………好きだよ」
行き場のない想いを、口にすることは二度とない言葉を、もう一度吐き出して、
俺は、深夜の歩道をまた歩き出したのだった───……