彼女を好きなワケ 【逢いたい~桜に還る想い~・番外編】
制服のワイシャツを脱ぎながら、ふと、
──『なーんか、いいことあったのかぁ?』
昼休みの一ヶ谷とのやり取りを思い出した。
いいこと………。
あの日───9月の末、千ノ池公園へ行った日……
トーコさんと、『一緒にいよう』って決めた。
あれから、1ヶ月。
決して、“いいこと”とは言えない。
────それは、解ってる。
だけど…………
階下(シタ)からトーコさんが上がってくる音が聞こえて、
「郁生くん、たい焼き温まったよー。食べよー」
部屋をノックする音がしたから、返事をする代わりにドアを開けて、
「あ、着替え………」
言い掛けたトーコさんの腕を掴んで引き寄せたら、
「……きゃっ……」
びっくりしたトーコさんは、バランスを崩して、俺の腕の中に収まった。