彼女を好きなワケ 【逢いたい~桜に還る想い~・番外編】
祭の舞台裏
※本編『大学祭』の節の郁生サイドの話です。※
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「ほえー、キャンパスん中って、結構広いでありんすなあ?」
秋晴れの空。一ヶ谷ののんびりした声。
「……なに、そのイミフな花魁(おいらん)言葉───しかも、口開けすぎ。一ヶ谷、バカっぽい」
矢のようにビシッと飛んでくる杏崎の言葉に、
「……杏崎ぃ、バカはないじゃん」
わざとらしく「シクシク」と泣き真似をする一ヶ谷。
「“バカ”とは言ってないし。バカっ“ぽい”って言ったんですけど」
「もー、未桜は言い方キツイのっ」
横から、杏崎の幼なじみという、9組の倉田さんが口を挟み、
「倉たん、優しい! 素晴らしい!!」
「…………。
うーん、確かにバカっぽいね。しょーがないかな?」
「でしょ?」
二人から半分憐れみの眼差しを向けられる一ヶ谷に、もちろん俺からのフォローの言葉はなし。
───はあ、頭痛い。
何でこんなメンツで出かけることになったんだ。