彼女を好きなワケ 【逢いたい~桜に還る想い~・番外編】
一ヶ谷・杏崎・俺、ほぼ初対面の倉田さんという不可思議な組み合わせで、
桜並木の道を歩きながら、俺は小さくため息をついた。
今は葉が綺麗に色づいているが、春には綺麗な薄紅のトンネルになるだろう。
文化の日で休みの今日───この不可思議なメンツで歩いているここは、トーコさんが通う大学。
俺らの高校と同じ駅のロータリーからすぐ門の見える、このキャンパスに入るのは二度目。
一度目は───酔っ払いトーコさんを迎えに行ったあの日だ。
思い出すと、懐かしいような恥ずかしいような……。
でも………
「なあなあ郁生ぃ、どっから回る? あっちがメイン?」
目の前をヒラヒラっと通過する一ヶ谷の手。
「えっと……」
「あたし、まずは型抜き屋行きたい。
メイン歩くと混んでるだろうから、このまま真っ直ぐ行っちゃおうよ」
「未桜、見せて。……うん、裏側から行った方がいいね。総合校舎の中庭だって」