好き、だから抱きしめて



着替えてリビングに出るとボサボサ頭の藤宮が
テレビ前でパンをかじっていた。



「…おはよう。昨日はありがとう」



『あぁ』



その芸能人らしからぬ姿に必死に笑いをこらえた。



『寝て元気出たようだな』



私をチラっと見てニヤッと笑う。今までなら
ムカつくその笑い方が今は私の心臓をキュッと締め付ける。



あれ?なんだろう。この感じ…。



『……なのか?』



「えっ、なに?」



考え事をしていた私は藤宮の言葉が聞こえなかった。



『ちゃんと聞けよ。お前、今日休み?』



「…そうだけど」



『じゃ、出かけるからサッサと用意しろよ』



「は?」



藤宮は早くしろと言ってバタバタと支度を始める。なに?私の意見は無視ですか?

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