メイドさんに首ったけ!?
霧様の儚い笑顔に胸が締め付けられ、言葉が出なくなった変わりにとめどなく涙だけが溢れてきた。


まさか、まさかそんなことを言われるなんて……。


私は霧様のメイドなのに……。

彼女にしていただいているだけでもおこがましいのに……。


そんな先のことまで考えていてくださったのですか?


「露?」


顔を両手で覆い、しゃくり上げていると霧様が覗き込むように私の名を呼ぶ。

それの呼応するように顔を上げ涙を拭うと、私の精一杯の気持ちを霧様にぶつけた。


「霧様……っ、私で、よろしいのです、か……?」


まだ止まらない涙でしゃくり上げながらまっすぐに霧様の目を見つめる。


すると、霧様は今まで以上に綺麗に優しく微笑まれ大きく頷いてくれた。


「露で、じゃない。露がいいんだ」

「……っ霧様…」


再び強く体を引き寄せられ、そのたくましい胸に身を預ける。


霧様の温かい腕の中……。

その温かさをより一層感じるために、私も霧様の背中に腕を回す。


いつの間にかいなくなっていた動物たち。

誰もいない遊園地のショーステージの中で私たちはきつく抱きしめあった。


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