先輩×後輩
「だから遠慮とかいらないし。連絡して」
やっぱり。
俊くんは、あたしを喜ばせる天才だよ。
あたしはうんと頷いて、俊くんに寄り添った。
これから、2人の夏が始まるんだね。
…なんて、そんな恥ずかしいことは声に出しては言えないんだけど。
「おいで」
「ん…」
ちょうど信号で止まり、俊くんがぎゅっと抱きしめてくれる。
夜だから、人通りも少ない。
「…会いたかった」
「え…」
俊くん、今会いたかったって…?
あたしに…?
「さくら課題頑張ったら遊べるって思って、我慢してた」
「俊くん…」
「いっぱい遊ぼうな」
もともと、あたし達はそんなに頻繁には会ってなかった。
もちろんできることなら毎日会いたい。
けど、やっぱりそれはできないこと。
どんなに頑張っても、高校生と大学生の恋愛には壁があるんだ。
だから、今までも週に2回ぐらいしか会えてなかったの。
だけど今週は、あたしの大学も忙しかったし、俊くんもバイトだったりで、まだ会えてなかった。
俊くんも、あたしに会いたいって思ってくれてたんだ。
それがただただ、嬉しかった。