弟系男子が『弟』をやめた時。
あぁ、
私はこの男に負けるべくして負けたのか。
今度は男子達の輪に入って
上履きで全力でサッカーを始める眞樹原を見て
悲しみを超えた虚無感を感じる。
「私もそろそろ弁当小さくしてみようかな。」
「頑張れ。まだ間に合う。」
悠里はぶらりと垂れ下がった私の腕に触れ
それからぎゅっと私の両手を包み込んだ。
「あ、永澤」
と、眞樹原の声がした。
なんじゃい、今クライマックスなんじゃ。
そう思って声のした方向を向くと
一秒間何回転してんだよってほどの
高速回転がはたらいている上履きが
目の一寸先に見えた。
「え、やばくね───────
ぶっふおおおおっっ!!!!」
素晴らしいクリティカルヒット。
上履きは私の肉片を飛び散らせるかのように
鋭い動きで私の顔面を蹴散らした。
いや、ただただ痛え。
「ごめん、永澤。狙ったんだけど
ここまで定まるとは思わなかった。」
悪気しかねぇ。
笑いながら謝ってくる眞樹原を見て、
いつか百倍返しすることを胸に誓った。