弟系男子が『弟』をやめた時。
一度そう思うと
後はただ落ちていくだけで。
試合が終わった後、
「宇美瀬くーん、
私は決して、決して
セクハラしたつもりはないんだけど、
色々迷惑かけてごめんねー…」
と顔を赤らめて笑う永澤さんを見たときには
もう既に彼女を溺愛していた。
────ただ。
「セクハラ女」
チッと彼女に聞こえるように舌打ちして
バレーボールを頭にぶつける眞樹原稟。
────眞樹原も、俺と同じ目で
永澤さんを見ている。
眞樹原やめてハゲる、と
頭をさする彼女を見る眞樹原の表情は
舌打ちした人の顔には似つかわしくないほど
楽しそうに笑っていて。
───きっと、眞樹原も。
永澤さんが好きなんだろうな。
俺はその時から、眞樹原を見るたびに
永澤さんを見つめるあの笑顔を思い出す。