嫉妬する唇
ひとまず一人になれた安堵感から、脱力したあたしは、トイレのドアにもたれかかった。

そのまま瞼を軽く閉じると、 女の口を塞ぐアイツの顔が浮かんできて、まるで自分がそうされているように感じてしまう。



なに考えてんのよ。
フルフルと頭を振って淫靡な妄想を追い払う。




アイツを男だと思ったことなんて一度もなかったのに……




それは、幼馴染みにありがちな、 男女のスイッチを入れるタイミングを逃してしまったせいだ。




なのに、今こうしてアイツが他の女の唇を貪っている場面に出くわしてしまった瞬間から、アイツはあたしの中に、しっかり『男』としてインプットされ、



そのせいで、 しっかりとあたしの『女』の部分が反応するとか………どれだけ欲に従順にできてるのかと呆れる。






いつ終わるかも分からないドアの向こう側。


激しさ増す彼女の息遣い。






あたし、何やってんの………
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