嫉妬する唇
大体、今日って言う日はそんな日じゃないじゃない。
久しぶりに上京してる中学校の仲間で集まろうってことになって、アイツは嫌々参加してるはずじゃなかったっけ?
いっそこのドアを開けて、そ知らぬ顔で横切ってやろうか。
それとも文句の一言でも吐いてやろうか。
「はぁー。」
どちらも、私の体を動かすだけの決め手に欠ける。
ならば、このままここでやり過ごすしかない。
仕方なく諦めてドアにもたれるように屈みこむ姿が鏡に写る。
あぁ。情けない顔。
お酒でほんのり赤く染まった顔はまぁ良いとして、色が剥げた唇は、自分が見ても奪いたくなる唇じゃない。
せめてリップの入ったポーチくらい持って来ればよかったな。
『後悔先に立たず』
はっ?
なんで、後悔すんのよ。
それじゃあ、あたしがアイツのキスを貰えなくて悲しんでるみたいじゃない。