月夜に願いを…
「クソォ!!」
パタパタ
男の足元には、小雨の様な音を奏で、鮮血が降り注いでいた。
その鮮血の発生源は、勿論男の両腕からである。
錆びた鉄の様な匂いと共に、男の両腕からは、これでもかと言うくらい、大量の血液が溢れ出していた。
「……」
ルナは何も言わずに、自らの右手に付着した血液を舌に絡ませた。
「決めた。お前、四肢を切り落としてから、ゆっくり目玉を引き抜いてやる。」
ルナは、純粋な殺意だけを纏った瞳で、男を射る様に睨んだ。
「…くっ!」
男は、両腕が無くなりながらも弱々しく右足をルナの顎先に向かって振り上げた。
ヒュウン。
「…ああ!!」
だが、爪先がルナの顎に到達する前に、右足の関節あたりから、ルナの手刀によって切り落とされた。
再び全身に駆け巡る激痛。
ぐしゃ
男の右足は、地面に赤い斑点を付けながら地に落ちた。
上手くバランスの取れなくなった男は、その場に倒れこんだ。
「…クソ!クソ!クソォォォ!!」
男は、今までの知的溢れる姿を消して、ただ恐怖と怒りに支配された姿をさらけ出した。
「うるさい。」
ザン…
ルナは、その男の醜い姿を、鬱陶しそうに眺めながら、男の喉元を手刀で切り裂いた。
「…カ…」
一拍遅れて、喉元から噴水の様に血液が吹き出した。
徐々に暴れていた左足の動きが鈍くなっていく。
「?」
ルナはその左足を不思議そうに眺めたが、しばらくするとその動きも完全に停止し、遂には、男の瞳から『命』がなくなった。
「…死んでしまった。」
ルナはその姿を悲しそうな顔で見つめ、ゆっくり口を開いた。
「…もっと…『遊びたかったのに。』」
「ルナ!!」
今までのルナとは、似ても似つかない発言を聞いたランスは、大声でルナの名前を呼んだ。
「…時間か?」
ルナは、ランスの声に全く気付かない様に、無視し、一言そう呟いた。