月夜に願いを…
「……」
クーラは押し黙った。
顔は床と平行にうつむいている。
「…どういう事だよ?」
ルナはかなりの怒りを抑えて、静かに喉を震わせた。
「ああ…俺は吸血鬼狩りだ。」
吸血鬼狩りとは、その名の通り吸血鬼を無差別に殺す職業の事である。
何故その様な職業があるかと言うと、単純に人間は吸血鬼の人間離れした能力を恐れているからだ。
「…そうかよ。」
ルナはクーラに氷の様に冷たい視線を送り、玄関に向かった。
「お前は綺麗事ばかり並べても、やっぱり汚い人間と変わらないんだな。」
ルナはそう吐き捨て、玄関のドアノブに手をかけた。
だが
「待ってくれ!!違う!俺は本当に吸血鬼を救いたい…!だが、お前と違って無差別に人間を殺す吸血鬼だっている!!俺は…俺の両親はそいつ等に殺された!!だから……俺は吸血鬼を許せない!!」
ルナはその言葉に先ほどとは比べ物にならないほどの殺気を込めた瞳でクーラを睨み付けた。
「なら何故吸血鬼を救いたいんだよ!?」
「俺の彼女が吸血鬼だったからだよ!!」
ルナはその言葉に一瞬怯んだ。
だが、続けてクーラは言葉を続けた。
「だが、俺の彼女…レイは太陽光に自ら当たって自殺した!!自分が生きる為に人を殺したくないから……俺はレイの様な吸血鬼を救う為に研究を続けている!!!そういう吸血鬼を救いたいんだ!!!」
「……」
ギィィ…
バタン
ルナはそれ以上何も言わずに研究所を後にした。
研究所には、静寂だけが残った…