御主人様のお申し付け通りに
「永田ぁ…ギュッてしてぇ?」

「軽々しく、この俺に要求すんな」

いいじゃんよ!

素直に何も言わずに、抱き締めろ!って。

「もぉ~」

私が上目遣いすると、

「ったく…」

布団の中で、お互いの身体をギュッとして、再びゴソゴソとイチャついた。

パート先で、すぐに気付かれた。

「あんた、新しい男できたでしょ?」

「何故?」

はぐらかす。

普通なら自慢できる。

だけど、離婚してすぐって。

ちょっと、やっぱり世間様からしたら、どうなの?って思われるから。

別のボスのオバチャンが、蟹歩きで近寄ってきてボソッと。

「艶がいい」

「そんな30過ぎて艶とかなんて、あるんすかぁ?」

そして、

「あんたの最近の歩き方が変だから」

歩き方って!…マジ?

「がにまた?」

「がにまただもん。やりまくってるって事は、彼氏できたんでしょ?」

ドハァーーーッ!!
察しが凄すぎる。

「もぉ、どこ見てんすか。どこを」

私は照れつつ、永田とのエッチを思い出す。

「そら、あんた可愛い癖に性格が男みたいだもん」

男みたい。
誉めてるのか?

「可愛くないって」

私は否定をかます。

「おまけに、オッチョコチョイ」

誉めてないし、それ。

「ちなみに頭も悪いバカですから」

最後は自分でバカだと告げる。

「まぁね」
「う~ん」

二人とも、うなずくんかーい!!

「容姿端麗、頭も良くて気が利いて、誰にでも合わすような普通のその辺にいる女じゃ、今の若い男は、つまんないらしいよ」

「私らの時代の男は、偉そうにして生きてるのが当たり前だったけどね」

60代のオバチャン達は、しみじみと語る。

「私、地味な生き方したくないですもん」

「そうそう、今は個性を自由に尊重できる時代だからね。ちょっと他とは違う人種を選ぶのも基準になってるみたい」

確かに。

永田、変だし。

あ、私も変って事か。
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