御主人様のお申し付け通りに
夕方、買い物をしてアパートへと帰ると。

珍しくアパートの前で、永田が腕組みしてドアの前で立っていた。

「おう」

そう言われて、

「よお」

と手を上げた。

「買い物してたんか?」

「そうそう」

「なぁ、おまえもう俺の部屋で住めよ」

「期日は今月末まででしょ?管理人さん」

私は部屋の鍵を探す。

「自分の敷地をウロウロするのも、何だかみっともないし」

知らねぇよ。

「私は平気だよ」

「俺が嫌なんだって…」

そりゃあね、欲求不満を満たすために、私の部屋を訪れる訳だから、後ろめたさはあるだろうね。

「永田寂しいの?」

「えっ?バカじゃん、おまえ」

あれ、今ヤバいって顔した。

「意外と可愛い反応すんのね、あんたは」

私は鍵を開けて、部屋の中に入る。

「俺をバカにすんなよ」

とか言いながら、部屋の中に一緒に入ってくる。

「よしよし」

私は永田の頭をポンポンと撫でてやる。

「やめろってんだボケ」

恥ずかしいみたいで、露骨に照れて困惑気味。

からかうと、おもろいな。

永田自身が物事に積極的になってる時は、やたら自信満々なんだけど。

相手がそう出ている時のコイツの反応は、うろたえた女みたいな表情してるから、笑える。

「今晩は何作るんだ?」

「もやし炒めにもやしの味噌汁だ」

ズカズカと部屋の中まで入ってきて、私の後ろから、食材を並べる手元を見つめる。

「何?」

「いや、しけてるな」

「お金ないからね」

「だからって、もやし何袋買ってんだよ」

「もぉ、イチャモンつけてこないで」

すると、永田は私を後ろから抱き締め、

「夕飯前に…どう?…」

「もぉ…ダメだってば」

「いいじゃん…」

髪をかきあげて、うなじにキス。

そのまま指先は、私のジーンズのベルトを外して、下着へと。

「やだぁってば…」

「すぐ終わらせるって…」

耳元で囁かれて、息を吹きかけられる。

「もぉ~っ…。夕飯は永田も一緒に食べてくの?…」

私ももう敏感になっちゃって、甘えた声で聞いた。

「トシコのもやし炒めもぉ…トシコも食べちゃう…」

はいはい。

永田は興奮してきて、鼻息が更に荒くなる。

だから私の耳元は、やたらと熱かった。


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