御主人様のお申し付け通りに
永田は火を止めて、

「トシコは?」

「私は違うね。家庭的だなんて思ってもらっちゃ困る。そんなふうに思われたら汚点だね、汚点。でも食べていかなきゃ生きられないから、仕方なく自炊してんの。だからこうしてる自分を本当は恥だと思わなきゃ」

「じゃあ、何もかも人にやってもらうのが理想?」

「やってくれる人がいるならね!だけど、そんな都合の良い人居ないでしょ!だから自分の事は自分だけでやってんの!もぉ!!そうやって、他人様にごちゃごちゃと自分のやってる事を、口出しされたくないんだよね!」

うっとうしい。

こういう話になると、絶対に私が非常識みたいに捉えられるから嫌なのに。

「安いもやしを買い物して、味噌汁の味付けみて。それはおまえにとったら苦しみなのか?自分が選んだ人生なのに?」

「自分が選んだから、苦しみだって耐えられんでしょうが。選ばすとも苦しまずとも、耐えられる自由でラクな生活が出来るなら、とっくにそうしてるっての!」

うるさいな。

「思想を強く語るわりには世間を、他人をなめてるな。おまえって」

「なめてない。別に理解して貰おうだなんて思わないけどねぇ。あんたみたいにケチ付けてくるだけの分からず屋だとか、私を否定する人は、極力身近から居ない方がいい!私には私の思想の理解者だけ居ればいいの!」

そうやって、今までそれでも様々な出来事を我慢しながらやってきた。

「極めて無理だな」

永田は皿にもやし炒めを盛って、ちょっとだけ取って、私の口へと食べさせた。

「美味しいか?」

あ…、意外と美味しい。

「うん」

「たかが料理で、その判断はウマイかマズイかしかないんだから。仮にマズイと否定されたからって、そこまで意固地になる事かって、俺は言いたいねぇ」

「意固地だとかじゃない!そんな私は単純に生きてないんだってば!…あんたのが充分意固地でしょ?」

「おまえだって他人を否定するくせに?逆にさぁ、否定された方が無限の思想が働くから、俺はそっちのが楽しみが、広がると思うんだけどねぇ」

「うるさい!うるさい!私を語るな!」

私は、おたまを片手にジタバタと苛立ちを身体で表現した。

「他人の言葉にイチイチこだわり過ぎなんだよ、おまえはさ」

ムムムッ…ムカツクーーー!
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