御主人様のお申し付け通りに
step 10 はっきり言わせてもらう
まだかまだかと

早く早くと。

相変わらずマメに、永田は何度も私のアパートの部屋の扉を叩きに来る。

「ちょっと、もうマジに俺の部屋に来いっての!」

「なんでぇ!もう後少しくらい、自分一人の時間を味わったっていいでしょが!」

仕事で人の中に埋もれて、疲れて帰って来て、ごちゃごちゃその後言われたり、やったりしたくないんだっての!

本当なら夕飯の支度だって面倒なのに!

お腹がすくから、仕方なく自分のためにやるの!私は!!

「荷物早くまとめろ!」

永田は勝手に部屋の中に入って来て、タンスから無理矢理に服を引っ張り出す。

「あと何日しかないのに、こんな有り様で、俺だってどう荷物を運んでやればいいんだよ!」

「うるさーい!うるさい!うるさい!」

私は永田の背中をバシバシ叩く。

「おまえ何でもギリだろ?いつも焦って物事決めるタイプだろ?おまけにダラシナイ。更には、その結果自分は悪くないとか言って、世間のせいにするんだろ?」

永田は殺気立った目をして、キツーイ目で睨んできた。

負けるもんか、こんな奴に。

「違うわい!見くびらないで!」

「見くびる!極めてバカで分かりやすい」

絶対に負けない!

否定されても!絶対に怯まないよ!

「あんま意味わかんねぇ事をぬかすと、俺はマジに怒って追い出すぞ!」

……ううっ!!

私の腕を掴んで、更に顔を近付けて…。

怖い顔。

うわぁ…怒ってる。

追い出すとか言われたら、言い返せない。

「じゃあ、今夜から永田の隣りでニャンニャンしちゃおっと♪よろしこー☆」

手のひら返して、嘘ブリッコをかましてやった。

バカかって。

「よしよし」

…チュッ…

あ、キスした。

「俺の言う事は、絶対この先聞いて行動した方がいいぞ。自分の首を締めたくなければトクにだ」

私の頭を撫でる。

なんだ、おまえは。

大きなビニール袋に、洋服や下着を詰め込んで、永田は両手で抱えて運び出す。

「ねぇ、永田ぁ」

「なんだ」

「永田は本当に私の事好きなの?それとも、やっぱり都合いいペット?」

「都合いいペット」

私はまたズッコケる。

おいおい。

「でも厳選した中の、好みのモノしか俺は手元には置かん」

お爺さんが確か言ってたな。

「宝物は大切にするタイプだね?」

「そうだな。おまえの宝物はなんだ?」

< 45 / 92 >

この作品をシェア

pagetop