御主人様のお申し付け通りに
永田はニッコリ笑って、

「まぁ、いいや」

永田にその後、洗い物を委ねて、

「ちょっと着替えてくる」

と、カバンを持って行く。

離れた場所で、またスマホを確認すると。

「10時頃迎えに行くから、家の前で」

それはまずい。

「近くのコンビニでもいい?」

私はすぐに返信した。

「了解」

ふぁ~っ、一先ずこれでスマホは閉まっておこっと。

土曜日の朝、こっそり永田より先に起きる。

寝息を立てて、相変わらず口唇を尖らして眠る永田に何故だか、私が癒されてた。

やっぱり言う通りの、寂しがり屋。

私に引っ付いてないと嫌みたい。

そっと握られた指先を離す。

シャワーを浴びて、着替えを済ませて、永田の頬にキスして、

「ごめんね、行ってきます」

と、カバンを持って出掛ける。

永田の家から出て来る所も、見られたくない。

家の側で、路駐する元旦那の車も、見られたくない。

駆け足で、コンビニへと向かった。

コンビニには、もう元旦那は到着していて、

「おはよう。ごめんね、お待たせ」

「おはよう」

辺りを見渡し、車に乗り込む。

「何だよ、まるで誰かに、つけられてるみたいな雰囲気だな」

元旦那は、爽やかに笑う。

「ちょっとね」

「コンビニで待ち合わせだなんて、急にどうしたの?」

私の様子がおかしいと気が付きながら、車を発車させる。

「また、あの管理人か?」

「まぁ、そんなとこ」

「おまえは言いなりだな、本当に」

ちょっと、呆れ顔。

「…口うるさいのも、本当の所、おまえに気でも有るんじゃないのか?」

さっ、察しが鋭い!

「まさか」

「男の勘」

元旦那は私の空いた手を握った。

さっきまで、永田が握っていた私の右手を。

「今日の夕方に東京へ?」

「そうだよ。車を預けたら、新幹線で」

「そっかぁ」

いよいよ、本当に寂しくなるな。
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