御主人様のお申し付け通りに
ヤバい、今回は真面目にヤバい。

慌てて、永田の背中を追いかけた。

「ごめんなさい、永田。本当にごめんなさい。怒んないでよぉ」

そらまぁ、普通は怒るわな。

「もう絶対に今後こういう事は、ないようにするからぁ…あっ、いやっ…あの、嘘は付かないし約束は守るからぁ」

永田、どうしよう、凄い怒ってる。

予想以上に怒ってる。

「どこまで汚ねぇ女なんだぁ。他人のために犠牲になりたくないだとかふざけた事をぬかしてぇ、他人を利用して生活してんだから、輪を掛けてふざけてやがる!」

違うもん。

そんなつもりないもん。

「その前に嘘付く事が許せない。トシコは俺を傷付けたいのか?嫉妬させたいのか?自分から信用なくすような事すんな!」

永田は買ってきたコンビニの袋を、ベッドへと投げ捨てた。

何も私は永田を苦しめたいだなんて、思ってないもん。

とりあえずは、自分の思い付いた通りにしてるだけで…。

「俺の好きって気持ち、自分の都合よくなぁ、もてあそんでんじゃねぇよバカヤロー!」

永田は大きな声で怒鳴ったから、私はビックリして震えてしまった。

「私…私ね…永田の事、本気で好きって…元旦那に伝えようとしたら…今の私を見てね…元旦那に、永田を好きなんだって…気付かれたの。…永田を好きって、隠しきれないくらいの気持ちが…表面に出てるって…だから雰囲気が柔らかくなったって…言われたの…」

泣きながら伝えた。

私でもね、この歳になってでも、他人によって良いふうに変われるんだなぁって思った。

口先で偉そうな言葉は言っても。

甘えてる。

一人じゃ、何も出来ないんだって事も。

分かった。

永田の言葉が心に染みていくからこそ、雰囲気が柔くなっていってるんだって。

私にとって、永田の存在は、大きいって。

改めて、感じたの。

「謝るしかないもん…謝るしか…。ごめんなさい…ごめんなさい。私、永田に嫌われたくないよ…ごめんなさい。大好きって…やっと本気で気が付いたのに…ごめんなさい…」

こうやって、永田の事で自然に涙が出ちゃうのも、大好きなんだって、証拠なんだって、分かって欲しい。

「永田ぁ…好きだよぉ…もう二度と嘘付かないから…絶対約束するから…」

永田は私に背を向けたまま。

「俺は今日、おまえの荷物をリサイクル業者に預けたり、おまえの残りの荷物を片付けたり、一人でやってたんだ…」

永田は拳を握り締めていた。


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