御主人様のお申し付け通りに
仔犬みたいな目をして、私にキスをする。

涙目をしてウルウルさせて、でもどこかキモチ良さそうな顔して。

永田。

ごめんね。

嘘付いて、ごめんね。

苦しませて、ごめんね。

怒ってたけど。

本当は、泣いちゃいそうな顔してたもんね。

悲しませて、ごめんね。

もう、永田には絶対に嘘は付かないよ。

私はもう、永田だけの私だからね。

絶対に永田だけの私だからね。

「…んっ…んぅ…」

「んっ…うぅ…」

熱いキスで思う事。

永田、どうしてそんなにまでして、私に本当の姿を包み隠さず見せてくれるの?

そして、口元を離すと永田はまだ欲しそうな表情をしていた。

トクッ…トクッ…トクッ…

永田の心の音が聞きたい。

私は永田の広くて大きな胸に、くるまって心の音を聞いた。

この人のために生きてもいい。

一瞬、そんな言葉が頭をよぎった。

この人の側にいたら、自分の理想とは違う理想を、幸せと感じる事ができるかな…。

自分だけの幸せじゃなくて、永田との幸せだとか…。

トクッ…トクッ…トクッ…

この大きくて広い胸で、いつでも私のワガママを受け止めてもらって。

ダメな所は、その場でダメだと叱ってもらって。

その後にはまた、優しく包み込まれて、私は毎日を過ごしていく…。

そんな日々を選択して、幸せだと感じられるのかな?

神様。

永田の側で、幸せになる選択は私にもあるのでしょうか。

だけど、

「…永田…愛してる…」

と、言葉が自然と出た。

安心感の溜め息みたいに。

「俺もだよ…愛してる」

髪を撫でる優しい手。

ギュッと抱き締めてくれる腕。

見上げると、視線をそらさずに私を真っ直ぐ見つめる力強い瞳。

「おまえよりもね…」

「やっぱりか?」

照れるから、笑いを取ろうとしちゃうよ。

「ね、前の旦那よりも?」

「一緒にすんな。俺は誰よりも、おまえを…愛してる…」

…本気だ…。

やっぱり、私に本気なんだ…。

「永田」

痛いくらい強く抱き締めてくれた。
< 61 / 92 >

この作品をシェア

pagetop