御主人様のお申し付け通りに
「永田の秘密…知っちゃったよ…私…。知っちゃったよ…。秘密なんて私だけだと思ってて…永田に安心しきっちゃってたから…急にそんな事聞いて…ショックが大きくて…」

やだ、私。

支離滅裂してる。

「後妻だとか…言われたし」

「…誰に?」

「勝手に品格が違うとか…言われたし」

「…誰に言われた?」

自分を否定された事も、かなりムカついてるのに。

「誤解されて…知りたくない事まで知って…何で私がこんな目に合わなきゃいけないのさ!」

「……」

永田は少しだけまた黙って、バサッっと包み隠さず、丸裸で起き上がる。

さっさと、パンツを履いて私服に着替えてる。

「な、永田?」

「ちょっと行ってくる」

あの…私、泣いてるのに慰めてくれない訳?

部屋をとっとと、出て行く。

放置かよ、私。

私はベッドで横になると、玄関の閉まる音がした。

気になって、二階の窓から永田の姿を見つめた。

アパートが取り壊されて駐車場になってから、かなり外の見通しがよくなった。

永田はタバコに火を付けて加えたまま、どこかに歩いて行く。

しばらく歩いて、何軒か先の住宅のインターホンを押している。

えっ?…まさか。

出てきたのは、さっきのクソババア。

嘘でしょ、何か…何か言ってるのか?!

ちょっと、マジか。

明らかに永田が、一方的に何かを言っている。

ヤバいヤバい!

私は慌てて部屋を飛び出して、玄関を出て行く。

な、何であのババアだと分かったんだ?!

焦りながら駆け寄って、

「あんた、何してんの?もぉーっ」

「トシコ」

永田は、困ってる私の頭をクシャッと撫でた。

二人で部屋に戻ると、さっそく私を押し倒した。

首筋に口唇をなぞらせて、息を吹き掛けながら永田は言った。

「トシコを傷付けたら、許さないって伝えてきた…」

「マジ?」

私は永田の握られた指先を、握り返す。

「…マジだよ」

「そう…」

「それから…黙ってて、ごめんな…」

永田は申し訳なさそうな顔をした。




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