御主人様のお申し付け通りに
バカバカ!

アイツを一瞬でも思い出しちゃうなんて。

なんたる気色悪い!

もう絶対、思い出さないんだから!

私は髪をタオルで拭きながら、風呂場の戸を開けると、

ギョヘーーーッ!!!

「なっ!何で居るのぉ!!」

私はビックリして、しゃがみこむ。

「歯を磨いて、何が悪い」

ち、違うーっ!!

確かに脱衣場と洗面所が、同じ場所にあるのは分かる。

歯を磨いているのも分かる。

だけどさ!!

「いつから居んのさぁ!!」

永田は口に歯磨きの泡を、たんまりつけて言う。

「だいぶ前から」

「嘘でしょ!!」

「いや、本当に」

ヒエェェーーーッ!!!

頭ん中、真っ白。

いやいや頭ん中、それこそグチョグチョ。

うがいをして、永田は冷たく言った。

「早く服着て、部屋に戻れ」

「あの、あのさ…」

何て言えばいい。

うわっ、どうしよう。

「なんだよ…」

「変態!!」

私は慌てて、パンツを履いてブラを付け、パジャマを着る。

「今夜は冷えるみたいだから、暖かくしてさっさと寝ろよ」

えっ…何今のらしくない言葉…。

「おやすみ」

永田はわざと脱衣場の電気を消して、去って行った。

私は慌てて、電気をまた付ける。

おやすみだってさ。

まともな事も言えるんだ。

あの変態。
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