御主人様のお申し付け通りに
永田は、私の頭を撫でる。

「いいよ、おまえはおまえで好きに口に出して、なめた事をほざいてたら」

なめた事か。

鼻で笑っちゃう事なんだ。

私の言葉は。

「永田はどう思ってるの?いつも私ばかりが本音を言って、永田の本音を聞いた事がない」

「俺かぁ?」

結婚もしたくない。

子どもも、産みたくない。

他人のために、犠牲になりたくない。

でも幸せにして欲しいだなんて、私もよくもまぁ、自分勝手な発言を、散々永田にぶつけたもんだけど。

「身構えると、ろくな事ないからな。俺としては、おまえとなら…もう一度考えてもいいと思ってる」

ふわっと、今の言葉で宙に浮いたみたいに心臓がなった。

「…人を女をまた信用すると、また自分が無駄に傷付くかもだとか、考えないの?」

嬉しいけど、簡単に嬉しがらないのが私。

簡単に、他人を信用しないのが私。

「…私は永田が幸せにしてくれる代わりに、あんたを裏切ったりはしない。でも、人の心は移り変わりが激しいでしょ?良いようにも悪いようにも変わるから…それなのに信用できるの?この私を」

永田は私を見つめた。

何だろう、素直にどうしても物事を受け止められないの。

色々と、ごちゃごちゃと自分の黒いモノを知ってるから、その他人の黒いモノを考えてしまう。

「好きなら好き。信じてるって言ったら、まずは信じる事。おまえは腹の底ばかりを、そのまま理屈こねるからダメなんだよ」

そして、強く抱き締められた。

「俺が今から言う言葉に、全部イエスで答えろ。…いいね?」

ダメだ…、コイツ…マジ優し過ぎる。

「俺の事、好き?」

「やだ、恥ずかしい」

「ほら、違うだろ?」

……。

「イエス」

「幸せになりたい?」

あぁー、こっぱずかしいや。

「イエス」

「俺を幸せにしたい?」

「イエス」

「俺を信用できる?」

嘘ついたら、私の方がブッ飛ばしてやる。

「イエス」

「俺の前では素直な自分を出せる?」

えっ!…そんな…。

「イエス」

って言わなきゃダメなんだよね。

「おまえは俺に言ったよね?俺の気持ちに添うって?」

「イエス」

「おまえは俺に言ったよね?俺の言う通りにするって?」

「イエス」

「その約束は守れる?」

「イエス」


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