御主人様のお申し付け通りに
で、何なの?

永田の声が耳元で響くたびに、抱き締められた胸から心臓の揺れが、私の胸に伝わって身体全体を揺らす。

前よりも、好きだと感じてしまう。

「ずっと一緒に居たい?」

「イエス」

永田の背中の服をギュッと握った。

「じゃあ、もう一度聞くけど、俺の事、好き?」

「イエス」

私は永田が好きだってば!

当たり前だよ!

好き過ぎて、もう私はおかしくなっちゃうよ!

「…結婚したい」

「イエス」

……えっ?!

今、凄く小さな声で何か言ったから、とりあえず気持ちが高まっちゃて「イエス」と弾みで言ってしまったけど。

「永田、今…」

永田は目を強くつむったまま、苦しそうにしていた。

「俺、おまえと結婚したい。ダメかな?」

その瞬間。

自分のこの先の一生が、永田の背後に映画みたいに映し出された。

早送りみたいに、映し出されて…。

不思議な事に、笑ってるの私。

笑ってる私の表情を見て、永田が優しく笑ってるの。

「幸せって…私の幸せって…もしかして永田と居て…違う自分に変わっていく事なの…?」

私は涙が溢れてしまった。

「過去がどうだったからよりも、ただ今はトシコを幸せにしたくて…それが俺のどうしても譲れないワガママなんだ…」

あなたと結婚したら幸せ?

だって、隣りであなたが笑ってくれているから。

あなたの子どもを抱き締めたら幸せ?

だって、隣りであなたが笑ってくれているから。

お互いに喧嘩したり、悩まされて、病気で伏せる事があっても幸せ?

だって、隣りであなたが笑ってくれているから。

何年も何年も繰り返し、同じ出来事が起きても、それも幸せ?

いつだって私の隣りで、永田は私に笑いかけてくれるから。

だから私は安心して、いつだって永田の胸に頬を寄せる。

私の幸せは、永田の側に居られる事…。

彼が笑顔で居られる事…。


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