御主人様のお申し付け通りに
step 16 御主人様のために
仕事が終ると、永田から貰った鍵で玄関の扉を開ける。

相変わらず、トイレに駆け込んで用を済ます。

永田は肉食だから、今夜はハンバーグ。

合い挽きミンチ☆

響きがエロッ!

実は、今日はアイツの誕生日なんだよね。

聞き出して、間に合ってよかったぁ。

ウオッシャーッ!頑張って美味しいハンバーグ作るぞ!

と、料理の本まで買っちゃったりして。

テヘヘ…☆

ビックリして喜ぶ顔が見たい!

み~た~い~なぁ~感じぃ~♪

数ヶ月前までの私は、自分で勝手に決めていた。

永田に言った身勝手な言葉。

「私は他人のために自分を犠牲にしない。こったもてなし料理は作らない」って。

その約束は守れなかったから、また怒られちゃうかな。

だって、好きな人のためだったら何かしなくちゃいけないって思うんだもの。

頑張って作ったら、アイツならちゃんとご褒美くれそうだもの。

私は本をギュッと抱き締めた。

どうか、喜んでくれますように…。

お肉を混ぜてパンパンパァ~ン♪

パンパンだって、エロいなぁ。

と、永田とのエッチを思い出してニヤニヤする。

ハンバーグは、焼き時間と火加減がポイントなんだよねぇ。

こういう細かい事は、本当に面倒臭くて大っ嫌い!

だから誰か代わりにやってよ!

なんて、思っても今の私には永田しか頼る相手がいない。

頼るべき相手のために作ってるんだから、頼める訳ないっての。

…やや中火の弱めね。

「オッケー!」

その間に洗い物して。

一切、作った痕跡を見せたくないからね。

キッチンをきれいに片付ける。

「掃除も洗濯も大嫌い」

掃除も洗濯もきちんときれいには出来ないけど…何だろう…してあげたいって思える。

当たり前の事を当たり前みたいに、永田は思わずに、必ず何かで私に返してくれるから。

また、やってもいいかなって思えるっていうか。

やれない事は、逆に気が付いて黙ってやってくれるの。

だから、自分もやらなきゃって思える。

釣り合いを上手に取ってくれてる事が伝わるから。

それを目の当たりにすると…。

自分の頑なな意思だなんて、時々消えちゃう。
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