御主人様のお申し付け通りに
爺さんと、あのスーパーに買い物に出掛けた時に、おまえは俺を差し置いて、あんな重たい水のケースを車まで運んでくれた。

軽々しく、俺の存在を否定した。

そんな気がしたんだ。

実は気になって、俺はこっそり一人であのスーパーに行った事があったんだよ。

おまえは周りのくそババアたちから、あれしろ!これしろ!なんぞかんぞ!と言われていて、見てた俺のがムカツクくらいだったんだぞ。

なのにおまえ、いちいち一人一人の言葉を受け止めてて…。

「あなたは神にトシコを永遠の妻にすると誓えますか?」

「誓います」

あれを見た時に、おまえが俺のモノになったらいいのになって思ったんだよ。

「あなたは神に永田を永遠の夫とすると誓えますか?」

「誓います」

おまえが、いつかの日に朝帰りした時も。

正直俺は、凄く心配していたんだ。

だけど、なに食わぬ顔して戻って来たおまえに、俺は勝手にムカついて、居酒屋なんて一人で行った事もないのにさぁ、飲み慣れない酒を飲んで…。

久々に嫉妬に狂わされたんだ。

あん時は、情けない所を見せて、悪かったな。

自由を求めるおまえ。

おまえを束縛したい俺。

でも俺は申し訳ないけど、おまえの御主人様。

「では、指輪の交換と、神に誓いのキスで祝福をいただきましょう」

おまえの想いは、出来る限り叶えてやる。

俺を必要として欲しいから。

おまえのためなら、何でも用意する。

指輪を交換して、ベールを上にあげると。

やっと、しっかりトシコの顔が見えた。

「エヘヘ☆」

余裕じゃねぇかよ。

あまりに可愛いから、俺は何も言えなかった。
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