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「ねえねえ、転校生、来るんだって」
そんなクラスメイトの会話を小耳に挟む。
私は読んでいた本から少し目線を逸らして話した張本人を探す。
「うそだー?」
「ほんとだよー! 私聞いちゃったんだもん」
話の提供相手は噂好きの女子であった。信憑性はあまりないといえる。
たぶん、どこかの企業に勤める、なんてことがあるなら彼女は給湯室で休みごとに職場仲間と噂話に花を咲かせるんだろうな、という相手である。
「理恵の話信憑性ないもんー。しかもこんな時期に?」
理恵、と呼ばれる相手に対し、笑ってそう答えた。理恵とは噂好きの子のことを指してるに違いない。いくらクラスメイトといえどもフルネームでは覚えていないのである。
まあ、彼女たちも私のことはフルネームで言えないだろうしおあいこだと思う。
「真姫ったらひどーい。ほんとにこれできたら奢りだよ?」
そんな彼女であるから私にもにわかに信じ難い話であった。真姫、と呼ばれた人に賛成だがこんな時期に珍しい、とは同意しにくい。いつならば珍しくないのだろう?
まあ、閑話休題。
そんな彼女らの話をぼんやりと聞きながら私は外を眺めていた。
夏にはあんな緑に茂っていた葉もいまでは枯れ葉に変わっている。
びゅう、と風が吹く度不安定に体を揺らしている。