いつか きっと…
始めに、顔の傷に消毒をしてくれた。
「口のとこ、ちょっと腫れてるみたい。
明日には痣できてるかも。」
困った顔をしながら、絆創膏をはる。
次に左手。
ガーゼで優しく触れる。
できるだけ刺激のないように、慎重に気を使ってくれているのが、美桜の手から伝わってきた。
「さっき…、廊下で女の人とすれ違ったでしょ?」
「えっ? あぁ、ちょっと派手な感じの人?」
「うん。あの人、どっかの会社の社長さんの愛人なんだって。前にママが言ってたんだ。」
「そうなんだ。」
「ママは『お金で人の愛情だって買えるのねっ』てバカにしたように言ってたけど、私にはよくわかんないんだよね。」
美桜は消毒を終え、包帯を巻ながら言った。