クレナイの歌
プロローグ
ピピピピ……。
「んー…うる、さ」
鳴り響く目覚ましを止める。
まだ眠い目をこすりながら、彼女は重たい身を起こした。
窓の外には澄み切った碧空が悠々と広がっていた。
もうすぐ冬を迎える季節だというのに、何とも言えない清々しさが嫌でも眠気を吹き飛ばす。
休日だというのに、誰とも約束はしていない。
そもそも約束をする相手が彼女にはいなかった。
朝食を済まし、午前は学生らしく勉強に励んだ。
そのまま家の中でゆったりと時間は流れ、だんだんと日が暮れていった。
夕方の頃だった。
彼女はコートを羽織り、思い立ったように部屋を出た。
朝の清々しさをまるで感じさせないこの黄昏ていく時間が、彼女は大好きだ。
何も考えずただ寒い暮れないの道を進み、今日もまたある場所へ向かっていた。