クレナイの歌
最近やっと歩き慣れた帰り道。
家の近くにある公園。その公園の裏の茂みから

また今日も……彼女を見つけた。


彼女は毎日そこから現れる。そして、去って行く。

すれ違うほどの距離もない。それほど、彼女とは距離がある。
ただ毎日、現れては通り過ぎる彼女の姿を、この目でとらえていた。


彼は彼女を知っている。

同じクラスだ。
会話どころか、目さえ合わせたこともない。名前も知らない。


彼女もきっと僕の名前を知らない。


その少女の億劫な瞳が何故か気になって仕方がないのだ。

あの子は…笑ったことがあるのだろうか。


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