クレナイの歌
エピローグ
「 ……またなっ」
そうして向けられたあいつの表情に、ここまで感情が揺らぐなんて思ってもいなかった。
こんなに私の心を満たすものなのか。
悲しいのか寂しいのか嬉しいのか苦しいのか、混じり混ざった暮れないの時。
紅に染まる花に囲まれたまま。
見えなくなるまでのあいつの背を眺めた。
本当にあっという間の出来事だった。
ここまで人に惹かれたことはないだろう。
きゅっと胸が苦しくなった。
「またね……」
そうして彼の名を、一人彼女は呟いた。
彼岸花に囲まれながら。