smell sweet
「…帰る…」



こんな顔、むーさんに見せられない。『お笑い担当』の私が、泣いているなんて…。



「えっ!?米沢さん…」



私は、むーさんがどんな表情をしているのかも見ないで、混み合うショッピングモールを逃げるようにして走り出した。



とにかくとにかく走って…でも、足の長いむーさんに追いつかれてしまった。



「待って!」



ガシッと手首を掴まれた。振り払うことは、できなかった。悔しいけれど、むーさんが初めて自分から、私に触れてくれたのが、嬉しかったから。


恐る恐る、むーさんのほうに顔を向けた…。



えっ!?



むーさんは、私と同じ表情をしていた。



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