恋色電車
「顔はそんなに見たことなくて。」
見たことないんじゃなくて、見せてくれないんだよ。
いつも被ってるキャップのせいで。
私はあの人の事を思い浮かべながら淡々と答えた。
「雰囲気が柔らかくて、それを裏切らない位の優しさと笑顔を持ってる人」
「ふ~ん。イイ人そうだね」
「いい人だと思いますよ。でも、私その人とそんなに話したことないんです」
話し始めたのなんて、ほんとに最近。
そんな私の事、あの人はなんの感情もないんだろうなぁ・・・
「羽生さんにもその人の事知ってもらいたいなぁ~」
落ち込む気持ちを追い払うように、笑顔で羽生さんに言う。