きみと繰り返す、あの夏の世界


ドクンドクンと鼓動が騒ぎ出す。

こんな状況で言うつもりなんてなかったけど。

今が、そのタイミングだという気がして。


「せ、先輩。あの……私……実はずっと……」


胸の高鳴りを感じながら、勇気と共に心に秘めていた言葉を絞り出そうとした……

その時。

水樹先輩が、意地悪そうに笑って。


「っていう、冗談」


一気に雰囲気を軽いものにした。


「水樹先輩っ!」


危なかった!

先輩の冗談を見抜けずに、うっかり告白してしまうとこだったーっ!


「冗談ならもっと冗談らしく言ってくださいっ」


私の抗議に水樹先輩は申し訳なさそうに笑う。


「ごめん。でも、元気になってくれて良かった」


ああ……ほら、やっぱりそうだった。

水樹先輩はいつだって優しい。


< 134 / 381 >

この作品をシェア

pagetop