きみと繰り返す、あの夏の世界


集合時間まで、あと10分もない。

職員室への侵入は面倒事になると困るので、最初から探す範囲には入っていない。

なので、私たちは1階廊下の突き当たりにある図書室へと向かった。


カラカラと出来るだけ静かに扉を開けて、夜の図書室へと入る。

木や本特有の匂いが鼻をくすぐり、その中を私と水樹先輩はゆっくりと歩き、手がかりとなるものを探した。

テーブルの上には何もない。

全ての本をひとつひとつ探すのは大変だから、背表紙や本と本の間を注意深く観察していく。

でも、特にこれといったものはなくて。

神隠しの真相に迫ろうだなんて、やっぱり無謀だったんだろうか。

そもそも、本当にそんな現象があるのかと、私は思い始めていた。

水樹先輩が消えてしまうなんて、そんなの私が見たただの夢で……

噂とは、何の関係もない。

それが、今回、私の求めていたものの答えなのだろうと、本棚を見つめながら考えていると。


「……これ、文字?」


少し薄いけれど、本棚の横板に黒い文字のようなものを見つけた。


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