きみと繰り返す、あの夏の世界


いたずら書きだろうかと思ったけど、懐中電灯で照らして読んでみる。

隠れている部分もあったので、その部分の本をどかしていると、水樹先輩が私に気付いて隣に立った。


「何かあった?」

「多分、いたずら書きだと思うんですけど……」


年数が経っているせいか、消えかけている文字もあるけど読んでみる。


「"隠され……想いが、願い……の大切な人を。大切な、誰かを"」


『隠され』という綴りに、私はハッとして水樹先輩を見る。


「これって、もしかして」


何、とは言わなくても先輩は理解してくれたようで。


「神隠しのことかもしれないね」


水樹先輩はひとつ頷きながら言った。

他のみんなにも見てもらう為に、スマホで写真を撮る。


「集合時間もそろそろだし、戻りましょうか」


確実なものではないけど、収穫があったことに心躍らせながら先輩を見れば。

先輩は、窓の外に見える月明かりをぼんやりと見つめながら唇を動かした。


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