きみと繰り返す、あの夏の世界
夏休みも中盤が過ぎた8月中旬。
藍君と同じ会計をしている2年の赤名(あかな)君の元気がないからと企画したバーベキュー。
水樹先輩と2人、早めに河川敷で待ち合わせて準備するはずだったのに、前日に溜まっていた宿題に追われて夜更かし。
そして寝坊。
まんまと遅刻してしまった私は先輩に平謝りし、なぜか早く来て手伝ってくれていた藍君にも頭を下げたという。
恥ずかしくも申し訳ない記憶に、私はハッとなった。
「もしかして、それが原因で水樹先輩は……?」
「みずき先輩?」
「うん。昨日来なかったのは、そこに問題があるからかと思って」
……と、言ったものの、よく考えればそれが原因であるなら、そもそも私を映画に誘ってくれるわけがない。
だとしたら原因は別にあることになる。
あ、そうだ。
藍君にちょっと聞いてみよう。
「ねえ、藍君。昨日、水樹先輩に連絡取ったり会ったりした?」
取っていたなら、会っていたなら、事故のような類の最悪な事態は免れる。
そう思って返答を待っていると、藍君が私を見つめ瞬きを繰り返しているのに気づいた。