きみと繰り返す、あの夏の世界
【XIX】消えない不安
学園の校舎に設置されている時計が12時30分を過ぎると、その人は生徒会室にやってきた。
「すみません、急にお願いして」
会長の声に、その人は「いやいや、いいよいいよ」と言いながら、椅子に腰を下ろす。
この、もじゃもじゃ頭がトレードマークな人は、瑚玉学園の教師で、先週、三重野先輩が話していた古典の日長先生だ。
「それで、神隠し……だったかな?」
ここに来る前に会長か副会長が話してあったのか、先生は私たちが頷くと、低く落ち着きのある声でさっそく本題に入った。
「僕が知ってるのは、神隠しとはまた違うかもしれないけど、構わないかな?」
その問いかけに三重野先輩が頷いて、構いませんのでお願いしますと促す。
日長先生は首を縦に振ると、その頃の事を思い出しているのか、視線を上向かせた。