きみと繰り返す、あの夏の世界


キャンプ場に着くと、まだ待ち合わせより10分早いせいか水樹先輩の姿は見当たらない。

予約の時間が決まっているから、受付も出来ないし、とりあえずロビーの椅子に座って待っていようかと考えていたら。


藍君が、キャンプ場の入り口に立っているのに気付く。

彼は、青々とした芝生が広がる景色をぼんやりと眺めていた。


「どうしたの?」


藍君の横に並んで話しかけると、僅かな沈黙の後──


「……夢で見るんだ、ここ」


零すように話す。


「夢?」


聞き返すと藍君は眩しそうに目を細めて。


「ここで、あの女の人を追いかけて駆け回る夢」


夢の内容を教えてくれた。

あの女の人と言われて思い当たるのは、1人。


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