きみと繰り返す、あの夏の世界


「それって、学校で見たっていう人?」

「そう。あの人が出てくる、子供の頃の夢」


子供の頃?

私が首を傾げたのを知ってか知らずか。

「子供なのは俺だけ」と告げてから、藍君は話を続ける。


「知らないはずなのに……でも、知ってる気がするんだ。懐かしい感じっていうのかな」

「名前は呼んでた?」

「呼んでない。でも、夢を見るようになったのは"えっちゃん"ってのを聞いてからなんだ。その夢で、ちっさい俺は"ねーちゃん"って呼んでたけど……俺、年上の知り合いも姉もいないし」


知らないはずなのに、知ってる気がする。

そして、藍君しか見てないという女の人。

これはもしかしたら……


「……やっぱり藍君の知ってる人で、神隠しにあったってことなのかな?」

「さあ? 試しに家族に聞いたけど、そんな面倒見のいい知り合いは覚えがないって」


それはそうだろう。

高杉さんの言葉やケースを考えても、みんな忘れてしまうんだし。


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