きみと繰り返す、あの夏の世界
藍君は意味を掴みかねたのか「は?」と訝しげな顔をしたけど、続きを聞こうとしてくれているようで、何も言わずに私の言葉を待ってくれていた。
上手く伝えられるかわからないけど、私は自分の中にある記憶をどうにか言葉にしていく。
「私だけ覚えてて、みんなは覚えてなくて。もしかしたら、ただの夢かもしれないんだけどね。でも、その日が……どんどん、近づいてるんだ」
「近づいてるって……先の話? 頭大丈夫?」
過去ではなく未来の話しを持ち出した私に、藍君は眉をひそめた。
や、やっぱり変に思うよね。
なんせ、私だってまだよくわかってない状況なんだもん。
「あ、あはは……やっぱ。普通じゃないよね。ごめん、忘れて」
誤魔化すように笑うと、意外にも藍君は真面目な顔をして。
「ちなみにさ、その夢で消えたのって誰?」
肝心な部分を問われて、私は少しだけ悩んでから──
「……水樹、先輩」
ポツリ。
その名を口にしたら、なんだか無性に泣きたくなった。