きみと繰り返す、あの夏の世界
昨夜のことを思い出して、私はにやけそうになる口を引き結んだ。
『真奈(まな)ちゃんが観たいって言ったの、思い出したからさ』
電話越し。
水樹(みずき)先輩の柔らかい声でそう言われた時、すごく嬉しくて。
私が観たいと言っていた映画を覚えていてくれたこと。
その映画を一緒に観に行こうと誘ってくれたこと。
本当に嬉しくて……
一夜明けた今日、約束した待ち合わせの時間直前でも、思い出して口元が緩む始末。
というか、一年前の今頃、私は想像すらしてなかった。