きみと繰り返す、あの夏の世界


もちろん消した覚えはない。

水樹先輩からの連絡を心待ちにしていたし、うっかり消すなんてこともないはずだ。

だとしたら、なぜ消えてしまったの?

このまま、わたしの中に残っている先輩との記憶も、思い出も、消えてしまうの?


そんなの……


「絶対に嫌だよ」


そう思った刹那。


キュッ……と、誰かが廊下を歩く音が聞こえて、私はその方向へ視線をやった。

視界に入ったのは、廊下の奥を歩く、男子生徒の後ろ姿。


その姿に、私は目を見開いた。


毛先にゆるくかかったパーマをワックスで遊ばせた、フンワリ感のあるレイヤーショートヘア。

そして、ビターチョコレートのような色の髪。


階段を登るのか下るのか。

廊下を曲がった時に見えた夕日に染まるその横顔は……


「み、ずき……先輩……?」


探していた


大好きな人の姿。


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