きみと繰り返す、あの夏の世界


どうしてなのか。

問いかけると、水樹先輩は再びうずくまって。


「どうするのが正しいのか、わからないんだ。もう、疲れたんだよ……」


先輩が物憂げに吐き出すと、空に閃光が走った。

続いて、耳を裂くような音が鳴ると、水樹先輩が顔を上げて。

降りしきる雨を力の無い瞳で眺めながら口を開く。


「神隠しはね、本当にあるんだ。そして俺もきっと……隠される」


予想していなかった言葉に、私の心臓が大きく跳ねた。


「真奈ちゃんは、それを知ってるんだろ?」


知って……いる?


「でも……あれは夢みたいな……」


そう、夢みたいなものだ。

予知夢、デジャヴ、そんな類のもの。

だけど、自分の置かれている状況がそれとは少し異なるような……普通じゃないことは感じていた。

覚えのある光景には何か意味があるんじゃないかと、何かが変われば水樹先輩を救えるんじゃないかと、勝手に思っていたけど。


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