きみと繰り返す、あの夏の世界


いなく、なる?

それは、どこかに引っ越すとかそんな話しだろうか。

……いや、そんなことじゃないはずだ。

だって、水樹先輩が辛そうな顔してる。


……もしかして。


「神隠しに、遭うんですか?」


いなくなる原因として一番あり得そうなこと。

それを口にしたんだけど、水樹先輩は首を横に振った。


「神隠しはきっと、俺みたいな奴がなるものだ。未来を望まないで、留まることを選んだ人間が消える。でも、真奈ちゃんはそんな風に思ってないだろ?」


問われて、私は確かに頷いてみせる。


「それなら、いなくなるって?」


一体どこに行くというのか。

わからずに更に問い詰めると、水樹先輩は暫くの無言の後に──


「死んで、しまうんだ」


悲痛な声で、紡いだ。


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