きみと繰り返す、あの夏の世界


「でも……このままじゃ……」


震える声で訴えようとすると、水樹先輩は苦悶の表情を浮かべながらも悲しそうに眉を八の字にして。


「そうやって、俺は目の前で何度も君を失った。何度も、何度も!」


叫ぶような声を発する水樹先輩の姿に、私の脳裏にいつか見た映像が走る。


水樹先輩の悲痛な表情と、彼の後ろに見える橙色に染まり行く夏の空。


先輩と2人、川に浸かってしまった時にも浮かんだ映像。


経験したことなんてないはずなのに、私はそれを知っていた。


どうしてかはわからない。

けれどきっと、時間を遡った影響か何かで、いつかの私の記憶が入り込んだのかもしれない。


水樹先輩が何度も繰り返した夏にいた、私の最後の記憶が。


先輩の手が限界を物語るように震える。

それでも必死に繋ぎとめようとするせいで、先輩の体がこちらにズルズルと移動はじめてしまった。


このままじゃ本当に、水樹先輩まで巻き込んでしまう!


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