きみと繰り返す、あの夏の世界
【XXXVIII】キミのいた夏
全ての光景がスローモーションのように見えた。
水樹先輩が驚愕する様も、彼の手から自分の手が離れようとしているのも。
私はまた、水樹先輩を悲しませてしまう。
彼に信じてと言ったのに。
それを違えて、私は裏切ろうとしている。
先輩の苦しみを。
今日までの日々を。
無駄にしたくないよ。
心から強く願った刹那──
離れようとしていた腕が、ガシリ、と。
「……ぁ……」
再び、強い力で繋ぎとめられた。