銀盤の国のお姫様
 一分二五秒超えた。演技は後半に突入。
 音楽は最初のメロディーに戻った。

 最初の頃に比べて、表情が柔らかくなってきた。
 大技トリプルアクセルを決めたからだと思う。
 しかしまだ仮面舞踏会は終わらない。

 最後にジャンプと、ステップシークエンスがそれぞれ一つずつと、スピン二つ残されている。
 それらを確実にこなせなければならない。

 後ろ向きに右足のエッジを外側に倒し、左足のつま先をついてジャンプ。
 少し小さめに舞って、左回りに回って、一二三。後ろ向き、右足で着氷。
 また左足のつま先をついてジャンプ。
 左回りに回って、一二三。後ろ向き、右足で着氷。

 三回転トウループ—三回転トウループの連続ジャンプ。

 三回転—三回転のジャンプの中で、一番簡単なジャンプだが、きれいに確実に決めて、大きな拍手をもらう。
 加点が期待できそうだ。

 後半のジャンプは基礎点が一割増しになるので、基礎点は合計九.〇二。

 シンバルの音に合わせ、左手で鼻・口・頬を覆い、ピシッと止める。目線はジャッジに向けられている。
 何かを見つけたように見える。


 シンバルが四回響くと同時に、“黒い仮面”を捨て、爪先立ちで駆ける。

 鳴り終わって音量が一気に小さくなると、屈伸して刃全体を氷にのせて、社交ダンスのように腕を構えて、軽やかにステップ。

 ステップシークエンスの始まりだ。レベル4だと基礎点は3.9。
 軽やかに、ターン、ステップが続く。

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